山口情報芸術センター[YCAM] 開館20周年記念事業『浪のしたにも都のさぶらふぞ』
作成日時:2023年5月9日
山口情報芸術センター[YCAM] 開館20周年記念事業
『浪のしたにも都のさぶらふぞ』
砂糖を通して見る台湾と日本の近代化の記憶
台湾を拠点に活躍する許家維(シュウ・ジャウェイ)、張碩尹(チャン・ティントン)、鄭先喻(チェン・シェンユゥ)の新作を発表する展覧会です。
この3人は、それぞれ台湾の主要な美術賞を受賞し、海外の国際展にも招聘されて国際的にも注目を集めているアーティストです。近年は、共同で、日本統治時代の台湾における砂糖産業を起点に、台湾と日本の歴史的関係や近代化の記憶を辿るプロジェクトをおこなっています。
本展では、このプロジェクトに連なる新作として、日本の近代化とともに産業が発展し、国際貿易港が誕生した北九州の門司および門司港を舞台に、人形浄瑠璃とCGアニメーションを組み合わせ、映像とライブパフォーマンスからなる作品を、YCAM とのコラボレーションにより制作・発表します。
人形浄瑠璃とCGアニメーションを融合した、映像とライブパフォーマンス
本展覧会は新作を含む二部作で構成されます。
第一部の《等晶播種》は製糖業で発展した台湾の虎尾を舞台に、日本統治時代に建てられた製糖工場をはじめ近代化の遺産が残る街の歴史を、台湾の伝統的な人形劇による語りや音楽とともに描く映像インスタレーションです。
第二部の新作《浪のしたにも都のさぶらふぞ》の舞台は、日本の近代化とともに産業が発展し、国際貿易港が誕生した北九州の門司、そして門司港です。門司にも製糖工場があり、かつては虎尾の製糖工場と同じ会社が運営していました。二つの街は砂糖で繋がっていたのです。また戦時中に戦略的に重要な拠点であったため、戦争の激化に伴い、空襲による大きな被害を受けたという共通点も持ちます。
本作では、この門司および門司港の近代化や戦争の記憶を、地域に伝わる平家の物語と重ねながら、日本の伝統的な人形劇である人形浄瑠璃とCG アニメーション、音楽、ライブパフォーマンスにより描きます。作品タイトルは、「壇ノ浦の戦い」の様子を綴った『平家物語』の一節を引用したものです。
人形遣いと人形、パフォーマーとアバターの動きが象徴的に表すのは、複雑に絡み合う「操るー操られる」関係性。歴史の中で繰り返されるこの関係性を生み出す動力とは何なのか。伝統と現代の表現を織り交ぜ、現実世界と仮想世界を行き来しながら見る者に問いかけます。
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